こんにちは、本日から確率過程について、勝手に解説していきます。
今までは確率変数列$\{X_i\}_{i \in \mathbb{N}}$を考えたが、これは可算濃度である。これを連続濃度まで拡張した、
$$
X_t:\Omega \times [a,b] \ni \omega \times t \rightarrow X_t(\omega) \in \mathbb{R}
$$
を考えることができる。これを確率過程という。
厳密に可算濃度の確率変数列から連続濃度まで拡張するには、以下の定理を用いる。
※以下可算濃度から連続濃度への拡張の話のため、最初から連続時間を仮定する前提であれば、いきなり確率過程の定義に入ってしまって差し支えない。基本的な考え方は有理数から実数を構成するものと同様である。
THM.5 ボレル・カンテリの定理
確率空間$(\Omega,\mathcal{F},P)$上の事象の列$\{ A_i \}_{i\in \mathbb{N}} \subset \mathcal{F}$に対して、$\sum_{i\in \mathbb{N}}P(A_i) < \infty$ならば
$$
A\equiv \limsup_{i \rightarrow \infty}A_i\equiv \bigcap_{i=1}^{\infty}\bigcup_{j\geq i}^{\infty}A_j
$$
なるAを定めると、$($これを事象列の上極限という$)$
$$
P(A) = 0
$$
を満たす。また、$A_i,A_j$が独立な場合で、$\sum_{i\in \mathbb{N}}P(A_i)$が発散するならば、
$$
P(A)=1
$$
ここで
$$
\bigcap_{i=1}^{\infty}\bigcup_{j\geq i}^{\infty}A_j
$$
というようなエグめの式が出てきたが、順を追っていけば理解できる。
まず$\bigcup_{j\geq i}^{\infty}A_j$であるが、これを集合の元を用いて表すと$\{a \mid \exists j\geq i , a \in A_j\}$となる。
これは、$i$以上のある$j$が存在して、その$j$に対して、$a \in A_j$となる$a$、という意味である。
次に$\bigcap_{i=1}^{\infty}A_i$だが、これも集合の元を用いで表すと、$\{a \mid \forall i\geq 1 , a \in A_i\}$となり、1以上の任意の$i$に対して、$a \in A_i$となるa、という意味である。
よって、
$$
\begin{aligned}
\bigcap_{i=1}^{\infty}\bigcup_{j\geq i}^{\infty}A_j &= \bigcap_{i=1}^{\infty}\left\{a \mid \exists j\geq i , a \in A_j \right\}\\ &=\left\{a \mid \forall i\geq 1 ,a \in \left\{a \mid \exists j\geq i , a \in A_j \right\}\right\}\\ &=\left\{a \mid \forall i \geq 1,\exists j \geq i ,a \in A_j \right\}
\end{aligned}
$$
となる。すなわち任意のiに対して、それより大きいjが存在して、$A_j$に含まれるaの集合、と解釈できる。
証明.
$P(A)=0$のみ証明する。$\sum_{i\in \mathbb{N}}P(A_i) < \infty$であるから、$\exists M$が存在して、
$$
\sum_{i\in \mathbb{N}}P(A_i) = M
$$
とできる。そのため、$\exists m$が存在して、
$$
\sum_{i=m}^{\infty}P(A_i) < 1
$$
となる。したがって、
$$
\begin{eqnarray*}
P(A)&=&P\left(\bigcap_{i=1}^{\infty}\bigcup_{j\geq i}^{\infty}A_j \right)=\prod_{i=1}^{\infty}\sum_{j = i}^{\infty}P(A_j)\\
&=&\prod_{i=1}^{m-1}\left (\sum_{j = i}^{\infty}P(A_j) \right) \prod_{i=m}^{\infty} \left (\sum_{j = i}^{\infty}P(A_j)\right)\\
&=&0
\end{eqnarray*}
$$
となる。
$\blacksquare$
THM.6 確率変数列の極限
\((\Omega,\mathcal{F},P)\) を確率空間とし、\(\Omega\) 上の確率変数列を \(\{X_n \}_{n\in \mathbb{N}}\) とする。ある正の数列 \(\{\varepsilon_n\},\{\delta_n\}\) で
\[
\sum_{n}\varepsilon_n <\infty,\qquad \sum_{n}\delta_n <\infty
\]
を満たすものが存在して\[
P\left(\left\{ \omega \in \Omega\mid \left|X_{n+1}(\omega)-X_n(\omega)\right| > \delta_n \right\}\right) < \varepsilon_n
\]が \(\forall n \in \mathbb{N}\) で成り立つ時、\[
X=\lim_{n \rightarrow \infty}X_n
\]なる極限値 \(X\) がほとんどいたるところ存在する。
証明.
\(\sum_n\varepsilon_n<\infty\) より、ボレル・カンテリの補題(第一)から、事象
\[
A_n=\left\{ \omega \in \Omega\mid \left|X_{n+1}(\omega)-X_n(\omega)\right| > \delta_n \right\}
\]
に対して\[
P\left(\limsup_{n\to\infty}A_n\right)=0
\]となる。すなわちほとんど全ての \(\omega\) について、ある \(N(\omega)\) が存在して \(n\geq N(\omega)\) ならば \(\left|X_{n+1}(\omega)-X_n(\omega)\right|\leq \delta_n\) となる。\(\sum_n\delta_n<\infty\) より、\(m>n\geq N(\omega)\) に対して\[
\left|X_m(\omega)-X_n(\omega)\right|\leq \sum_{k=n}^{m-1}\left|X_{k+1}(\omega)-X_k(\omega)\right|\leq \sum_{k=n}^{\infty}\delta_k \rightarrow 0 \quad (n\rightarrow \infty)
\]となるので、\(\{X_n(\omega)\}_{n\in \mathbb{N}}\) はほとんどいたるところコーシー列に他ならない。確率変数列は \(\{X_n\}_{n\in \mathbb{N}}\subset \mathbb{R}\) であるが、\(\mathbb{R}\) は完備であったから、極限値 \(X\) は \(\mathbb{R}\) にほとんどいたるところ存在する。∎
上記の証明方法はコーシー列を使った実数の構成と同様の手順です。
DEF.7 確率過程
確率空間 \((\Omega,\mathcal{F},P)\) 上の確率変数 \(X_t\) を\[
X_t:\Omega \times [a,b] \ni \omega \times t \rightarrow X_t(\omega) \in \mathbb{R}
\]と定義する。この \(X_t(\omega)\) を確率過程という。
確率過程とはいえ、ものごとは過去から未来に向かって進んでいくのは変わりないため、その概念を数学的に表現する必要があります。
DEF.8 フィルトレーション
\((\Omega,\mathcal{F},P)\) を確率空間とし、\(\{\mathcal{F}_t\}_{t\in \mathbb{R}}\) を \(\mathcal{F}\) の部分 \(\sigma\) 加法族とする。\(\forall t,s \in \mathbb{R}\) に対して、\[
t \leq s \Rightarrow \mathcal{F}_{t} \subset \mathcal{F}_s \subset \mathcal{F}
\]が成り立つとき、\(\{\mathcal{F}_t\}_{t\in \mathbb{R}}\) をフィルトレーション、または情報増大系という。確率空間にフィルトレーションを加えた、\[
(\Omega,\mathcal{F},P,\{\mathcal{F}_t\}_{t\in \mathbb{R}})
\]をフィルター付き確率空間とよぶ。
フィルトレーションは確率過程論やもちろん時系列分析でも頻出の概念のため、知っておいた方がよいでしょう。
DEF.9 適合過程
\((\Omega,\mathcal{F},P,\{\mathcal{F}_t\}_{t\in \mathbb{R}})\) をフィルター付き確率空間とし、それ上の確率過程を \(\{X_t(\omega)\}_{t\in \mathbb{R}}\) とする。
このとき \(\forall t \in \mathbb{R}\) に対して、確率変数 \(X_t(\omega)\) が \(\mathcal{F}_t\) 可測となるとき、\(X_t(\omega)\) は情報増大系 \(\{\mathcal{F}_t\}\) に適合しているといい、確率過程 \(\{X_t(\omega)\}\) を適合過程という。
前述の通り、フィルトレーションは過去→未来の一方向のみ考えていますが、現代物理学では原則、時間反転対称性をもつため、これは相入れません。そのため現代確率論を使って、力学や量子力学を定式化する場合には不都合となります。そこで考えられたのが、未来→過去もふくめ、双方向の効果を考慮した、ベルンシュタイン過程、もしくは相反過程です。これはベルンシュタインやコルモゴロフによって厳密に定式化されました。
通常の伊藤解析や金融工学では、まずは時間が一方向に進むフィルトレーション付き確率空間を考えれば十分です。
次回はウィーナー過程について解説できればと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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