ややマニアックですが、数学IIIをつかった高校物理についてお話していきたいと思います。
高校のカリキュラムでは分野横断的な話ができず、どうしても数学は数学に閉じ、物理は物理に閉じ、化学は化学に閉じてしまう。そこが原因で「高校で習う数学はどのように応用されるのだろうか」や「物理や化学は公式を暗記してなんぼ」という話が出てきてしまうひとつの原因ではないかと個人的には考えてます。
したがってそういった垣根を壊す一例をこれから上げていきたいかと思います。
今回は運動方程式から運動量保存則とエネルギー保存則を導いてみます。
運動量保存則は
mv−mv′=FΔt
で、運動量の変化mv−mv′は力積FΔtに等しいというものですが、これを運動方程式ma=Fから導いてみます。ここでmは質量、aは加速度、Fは受ける力です。
加速度の定義は、速度の時間変化の極限でしたので、
a=limΔt→0ΔvΔt=dvdt
とかけます。したがって運動方程式は
mdvdt=F
と書くことができます。これを時間tで積分することを考えます:
∫t2t1mdvdtdt=∫t2t1Fdt
さてまずは左辺を見てみます。これはよく見ると置換積分の公式そのものですね。置換積分の公式は∫x2x1f(x)dx=∫t2t1f(g(t))dxdtdtでした。ここで x2=g(t2),x1=g(t1)としてます。数IIIの積分計算では置換積分公式の左辺→右辺の運用が主となってますが、(1)の左辺の積分では置換積分公式の右辺→左辺と使います。つまり
∫t2t1mdvdtdt=∫v2v1mdv
とかけます。質量mは時間に依存しないとすれば、
∫v2v1mdv=mv2−mv1
と計算できます。
一方、(1)の右辺についてですが、受ける力Fは時間に依存しない定数とすれば、積分は簡単に実行でき
∫t2t1Fdt=F(t2−t1)≡FΔt
したがって、(2)と(3)から運動量保存則
mv2−mv1=FΔt
が得られ、運動方程式から数Ⅲの積分を使って運動量保存則を導くことができました。
次回はエネルギー保存則を導いてみます。