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サラリーマンが関数解析を勝手に解説する無謀な記事5

こんにちは、前回までにバナッハ空間やヒルベルト空間をふんわりみてみました。今回はもう少し関数空間を説明していきたいと思います。

古典解析では、個々の関数に焦点あてそれぞれ別々に関数の性質を調べるに対し、関数解析では関数の集合を考え、そこに様々な位相を入れて、関数の集合の性質を調べる分野となります。
現代数学では、集合に位相や線型性などの何かしらの構造が入ったものを「空間」とよびます。何かしらの構造が入った関数の集合を関数空間と呼びます。

関数空間の例を挙げていきます。

  • \(C(a,b)\)

連続関数について、こちらこちらで少し紹介しました。ここでは、連続関数の作る空間を見ていきます。
開集合\((a,b)\subset \mathbb{R}\)上の連続関数はたくさん存在します。そこで連続関数
をすべて集めてきた集合を\( C(a,b) \)とします。関数の集合\( C(a,b) \)は線型性
\[
(af+bg)(x) = af(x) + bg(x) , \ f,g\in C(a,b) ,a,b\in \mathbb{R}
\]
が備わっており、線形空間となります。さらに位相 \( \| \cdot \|:C(a,b)\ni f \rightarrow \| f \| \in \mathbb{R} \)を
\[
\| f \| \equiv \sup_{x\in (a,b)}|f(x)|
\]
で定義すると、\( (C(a,b),\|\cdot \|) \)はバナッハ空間になります。実際\(\|f_n – f_m\| = \sup_{x\in (a,b)} |f_n(x)-f_m(x)|\)となり、これは関数列\( \{f_n\}_n \)が\( (a,b)\)で一様収束することを意味することから、完備性は示されます。

  • \(L^p\)空間

こちらの投稿で、測度空間\( (X,\mathcal{F},\mu) \)上の可測関数\(f\)のルベーグ積分は
\[
\int_X f(x)\mu(dx)
\]
と与えられるのでした。このようなルベーグ積分可能な可測関数をすべて集めてきた集合を\(L^p(X,\mathcal{F},\mu) \)、もしくは略記して\(L^p(X)\)と表記します。\( L^p(X)\)に位相\( \| \cdot \|:L^p(X)\ni f \rightarrow \| f \| \in \mathbb{R} \)を
\[
\| f \|\equiv \left( \int_X |f(x)|^p \mu(dx) \right)^{1/p}
\]
にとった空間を\(L^p\)空間、or ルベーグ空間といいます。

証明は省略しますが、\(L^p\)空間は位相\( \|\cdot \| \)に関して完備になるので、バナッハ空間になります。

少し厳密にいうと、\(L^p\)空間の元は可測関数\(f\)そのものではありません。というのもこちらの投稿で紹介したように、\(f(x) = g(x) a.e.\)が成り立つので、同値関係\(f\sim g\)を定義できます。すると、\(L^p(X)\)を同値関係\(\sim\)で割った商集合\( L^p(X)/ \sim\)が定義できます。したがって、\( L^p(X)/ \sim\)の元は同値類\([f]\)となります。これは周知の事実なので、\( L^p(X)/ \sim\)を単に\( L^p(X)\)と記載し、\([f]\)を単に\(f\)と記載する感じになります。

また\(L^p\)空間は\(C(a,b)\)を稠密部分集合に持ちます。すなわち\(L^p\)空間の元は、任意の精度で\(C(a,b)\)の元で近似することができます。ちょうど任意の精度で実数を有理数で近似できることと同じです。このような稠密な部分集合を持つ集合は可分であるといいます。

  • \(L^2\)空間

\(L^p\)空間の特別なケースで\(p=2\)としたものです。なぜ\(p=2\)の場合が特別かというと、これはヒルベルト空間になるからです。ちょっと見ていきます。

\(L^2\)空間のノルムは
\[
\|f\| = \sqrt{\int_X |f(x)|^2 \mu(dx)}
\]
で、これは内積
\[
\langle \cdot , \cdot \rangle : L^2(X)\times L^2 (X)\ni f\times g \rightarrow \langle f,g\rangle\in\mathbb{C}
\]

\[
\langle f, g\rangle \equiv \int_X f(x)\overline{g(x)}\mu(dx)
\]
で定義した時に、自然に誘導されるノルム
\[
\|f\|=\sqrt{\langle f,f\rangle}
\]
となるので、ヒルベルト空間になります。
(\(\overline{g(x)}\)は\(g(x)\)の複素共役を意味します。)

\(L^2\)はヒルベルト空間となることから、関数に対しての内積、関数が直交するという意味づけが可能になり、さらに関数の完全正規直交系を定義できるようになります。完全正規直交基底の存在によって、フーリエ展開が正当化されることになります。

具体的に完全正規直交基底を構成するにはスペクトル理論の用いる必要があり、これは稿を改めて説明してみたいと思います。

本日はここまでにします

最後まで読んでいただきありがとうございます。
質問等はコメント欄かお問い合わせにてよろしくおねがいいたします。

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