位相幾何学の書籍について紹介します。位相幾何学が何者かについてはこちらも参考にしてください。
- 理論物理学のための幾何学とトポロジー 第二版
その道ではいわゆる「中原トポ」と呼ばれる著名な書籍らしいです。物理学に必要な幾何学全般を扱ってます。技巧的すぎたり難易度が高い証明については敢えて割愛しており、その代わり定理の意味や使い方に重点が置かれていたります。そういう意味では厳密な数学書ではなく、物理学への応用に主眼をおいたものになります。日本の物理学者が英語で書いた数学の本を、数学者が訳した書籍という点でかなりユニークです。
最近第二版が出版されましたが、1巻のみで2巻は未定のようです。(上の図は1巻の表紙です)
ざっくり中身ですが、位相幾何学に関係あるのは、(2章,)3章,4章,6章です。一応1巻の目次全体を記載しておくと
1章:量子物理学、2章:数学からの準備(集合/位相)、3章:ホモロジー群、4章:ホモトピー群、5章:多様体論、6章:ドラームコホモロジー、7章:リーマン幾何学、8章:複素多様体
な感じですが、6章は5章:多様体論を知ってる前提なので、位相幾何の初学習時は3章と4章を読み込むでいいかと思います。ホモロジーやホモトピーの内容は基本的な事柄は全て網羅されているかと思います。物理の応用が主眼のため、4章の例がなかなかマニアックだったりしますので、物理学に精通していなければ飛ばしてしまってよいかなと個人的には感じます。(物理に明るくない人がこの書籍を読むかどうかはおいといて)
5章の補足のページで、微分位相幾何学(多様体のトポロジーを調べる分野)の内容が紹介されており、かなり興味深かったのを覚えてます。
- タンパク質構造とトポロジー
機械学習の次にバズると勝手に思っているトポロジカルデータ解析(TDA)の書籍を探していた際に見つけた書籍です。TDAではパーシステントホモロジー(PH)がその基礎的概念に使われていますが、PHについて解説した唯一の邦書が本書籍です。
130ページ程度ですが、ゴリゴリの数学書です。集合/位相を基礎として、まず1章で単体/複体の解説を行い、2章で代数学の基礎から説明をしています。群/環、加群を解説した後、ホモロジー群に入るようなホモロジー代数の王道をいってるかと思います。3章で1章と2章の内容を用いてパーシステントホモロジーを定義していきます。
代数学の知識も仮定していないので、ホモロジー代数を学びたい際の1冊目としてもおすすめできるかと思います。
- コホモロジー
近所の図書館で見つけたややレア本です。数学的な厳密性はそこまで追求せずに、数学のさまざま分野で使われているコホモロジーを紹介しています。
なかなか直感的でわかりやすいですが、4章あたりから難易度が上がります。
- Morse理論の基礎
近所の図書館からノリで拝借したもので、微分位相幾何学のモース理論を基礎から解説しています。本書籍の著者は多様体の基礎などで有名なので、借りてみました。
素人にはなかなか難しいですが、比較的丁寧でなんとか証明まで追っていける感じがしました。
内容としては、
第1章 曲面上のMorse理論
第2章 一般次元への拡張
第3章 ハンドル体
第4章 多様体のホモロジー
第5章 低次元多様体
といった感じで、第1章でイメージしやすい曲面を題材にして、今後でてくる必要な概念をほぼ説明していて、その後一般次元に拡張を行うスタイルをとっており、初学者にもとっつきやすいかと思います。